果実

十数年前の、なつかしい学生時代のノートが出てきました。
“天然果実”は木になったりする自然の産物。一方、法律用語で『法定果実』は「あるものから生じる収益をいう」と書いていました。
ふと、最近気になっていたお酒の話とオーバーラップしてしまいました。

日本酒も本格焼酎も自然を相手に造られたもの。天然の“果実”です。でも、なぜか自然といいきれない味わいや、商品としての付加価値を付けるためのいろんな思惑が入り込んでいるものを見かけたりします。
先日、某酒類流通業の大先輩の方と席をご一緒させていただく機会があって、その方がおっしゃっていたこと。「お酒もね、スターになるには素質だけでなく仕掛けも必要です」。

「仕掛け」があってスター選手に育てられたお酒は、たとえ素材がよくても法律用語でいうところの『法定果実=収益』としてしか扱われていないような気がして残念です。
自然に造られた“果実”としての味わいのよさなのか、『法定果実』としてのよさなのか、わからないまま飲まれていてはお酒もなんだか可哀想。

私の好きなお酒は、自然の摂理にそって造られた“天然果実”のようなお酒。

私のきき酒能力は、大酒飲み能力でしかないのであてにはなりませんが、それでも名前の知らないお酒でも「いいな、美味しいな」という出会いは結構あります。
この「いいな、美味しいな」のお酒は、理由はないけれど人の心をつかんで離さないお酒
だったり、正直に丹精込めて造られたことを感じる素直なお酒だったりします。
小さな町の酒販店であるがゆえ、全ての出会いと親密になれないのが残念なことですが。

人為的な思惑の入り込んだ『法定果実』であるお酒だけが、無条件に美味しいお酒であると思っていらっしゃるお客様は結構いらっしゃいます。
「お酒を勉強した詳しい人が美味しいというお酒は、美味しいと感じなければおかしい」「雑誌に取り上げられるお酒だけが美味しいお酒だ」みたいな風潮も手伝っているのかもしれません。

飲む方自身が素直に感じた「いいな、美味しいな」をもっと自信を持って大切にしていただきたいなと感じています。誰がなんと言おうが自分が美味しい、そう思われたお酒は無名でもきっといいお酒ですから。

京子

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