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夜は久保専務とお母様、奥様、今年から久保本家さんでお仕事をされているお料理上手な小森谷さんが座敷で宴会の用意をしてくださって、お酒を一緒にいただくことに。
「蔵人の方ともちょっとリラックスしてお話できるいい機会」と思いながらも、皆さんやっぱりお疲れのご様子。生酛の酒母もたくさん立っているし、明日も朝4時って仰っていたし。
本当に皆様、ごめんなさい。でも楽しい時間でした。小森谷さんの教えてくださった燗付け温度の話はとても勉強になりました。
ちなみに久保本家さんでは加藤杜氏に腕相撲で勝ったら杜氏の座を交代する、という蔵訓(?)があり(何という蔵!)、まだどなたも加藤杜氏に勝っていないらしい。
私と腕相撲しても、やっぱり両手でもびくとも動きませんでした。逞しくないとお酒は造れない。
翌朝4時に、皆さん起こしに来てくださいました。酛摺りを見たいと思っていたので、何はともあれ起きて酒蔵へ。もう一番摺りは終わっていました。
『睡龍』の生酛は若いうちは渋さが目立つけれど、やや熱めの燗につけて飲むと、旨みの幅がぐっと広がります。香りもほとんどなく、ここまで潔い食中酒というのは飲んでいて気持ちがいい。開栓して熟成を待つともっと奥の深い旨みが味わえると思うのだけれど……、凛とした酸が引き締め、旨みもありながら軽快にさえ感じてしまうこんな生酛のお酒は、いくらでも飲めてしまうので結局すぐ一升瓶が開いてしまいます。
二番摺りまでの時間、速醸の醪のタンクをのぞかせていただきました。いわゆる吟醸香がするなぁ……と思っていたら、加藤杜氏「いやな香りするやろ、これからこれを消していくから」と。あはは、やっぱりこの潔さ。絶対いい……。
『睡龍』の速醸はとてもきれいな味わいです。やっぱり食事の邪魔をしない、お酒の味わいが必要以上に主張をしない、そんなお酒です。
15BYの『睡龍純米』はとくに……。燗につけても物足りない位の繊細な味がきれいに拡がるのに、スパッと切れる。飲み進んでいくうちに、ふと輪郭を崩さない味わいの中にある緻密な旨みに気が付いて愕然とする、何度もそんな経験をしました。
ひと口利き猪口で飲んだだけでは、その真価はわからない。そんなお酒の代表格だと思います。
酛摺りを体験させていただきました。よくお酒の本の生酛のページにあるあの光景そのままです。
もちろん、時間のかかる丁寧な作業ではあるのですが、生酛が大変というのは別に酛を摺るからではないのだな……、というのが私の実感でした。
酛日数が非常に長いとか、経過の観察が細かく必要とか……。酒母の管理はそれはもう大変。暖気樽を入れたり出したり、タンクの周りを保温のためカバーをかけたりはずしたり。加藤杜氏「脱いだり着せたりたいへんやろ(笑)」と簡単に言っていらしたけど……。造り手の「忍耐」と「気力」、それが大変と言われる理由の本質である気がします。
いろいろ見せていただいても、お酒の造りの何がわかったわけではありませんでした。
でも、加藤杜氏のお酒造りにかける底知れない情熱、研ぎ澄まされた感性、蔵人の方々の姿勢、そんなものにあらためて感じ入ってしまった蔵元訪問でした。
忙しい造りの最中にお邪魔をして本当にごめんなさい。本当にありがとうございました。
京子
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