|
いつも蔵元訪問は主人ばかり。
蔵元さん、杜氏さんとせっかくお話しする機会があっても、お酒の味の話ならまだいいけれど「もろみの段階で……」とか「麹の状態が……」などと話しているのを聞いても私ひとりピンとこない。あの本のあのページあたりに書いてあったことかな? と想像するだけ。
「私も勉強しに行きたい。」
私も今年から蔵元へお邪魔することにしました。
造りのはじめの、今年のお米の勘をつかむまでの難しい時期に蔵元訪問なんて申し訳ない、と思いましたが「勉強させてください」とお願いしたら、龍神酒造さんが快く受け入れてくださいました。
『尾瀬のゆきどけ』のお蔵です。
『尾瀬のゆきどけ』は香りもありながら、酸と旨みの構成がしっかりしていて、きれいな味わいに勢いのあるお酒です。水の良さも味わいに表れていると思います。たとえて言うなら「晴れた日の澄んだ滝」ってところでしょうか。
昨シーズンから雄町にも挑戦しています。
『おりがらみ』も勢いがあって美味しいですが、味が落ち着いてきて丸みがでた『蔵内熟成』が私は好き。
さて、杜氏の堀越さんとお会いしたのはこれで4度目くらい。
少し控えめな印象はいつも通り。でも、若いのに実は頑ななほどのこだわりを持っている「職人」気質の方です。お歳は今年で35歳。酒造業界とは関係のない大学をでて、食品メーカーにお勤めの後、龍神酒造さんに入られました。
後で社長さんから「うちの社員は東京農大出身はいないんですよ。みんな違う畑の大学ばっかり」と聞きましたが、いつも新しい発想を、と考えているお蔵さんらしいな……と思いました。
龍神さんのこだわりは「手洗い洗米」。
通常、洗米は機械でやって、大吟醸クラスだけ手で洗う、といいます。
でも、龍神さんでは本醸造クラスからすべて手洗いします。
お米の水分量とぬか臭さを取る上で、洗米は何より重要だと考えるからです。
蔵内の室温に置いたお米の温度は平均して9℃くらい。お米と水の温度は同じくらいがよいから、井戸から汲み上げた水を冷やして同じ温度にします。
こうすると、せっかく精米したお米が割れなくてすむそうです。
洗米中ももちろん、米は水を吸うからその日の気温と水温を考えて、何分何秒で洗米から浸漬(水にお米をつけておくこと)までを終えると最初に決めるそうです。
実際にはじまりました。
今日は水温11℃、手を入れたら結構冷たい。こんなお水で作業するなんて大変。
お米は山田錦精米55%、来年のひやおろし用だそうです。今度あなたに会えるのは来年の秋ね、先は長い……。
タイマーを持って「せーの、ハイ、……後20秒、10、9、8……」
ザアーと水から引き上げ、水圧の強いホースの水をかけて更にぬかを落とす。
それから浸漬。もうひとつのタイマーを片手に最初のお米を水につけたまま、また新たなお米の洗米にかかる。10kgのお米を今日は13袋洗っていたので、全部で130kg。
大変な重労働だと思います。
蔵の全部をひと通り説明してもらいながら見せていただきました。
ビール醸造も見せていただきました。
それぞれ担当の方が出てきてくださり、説明をして質問にも答えてくださいました。
蔵全体を見て感じたこと。
蔵人が若くて活気に溢れている。「良い」と言われることはどんなに大変であろうと手間を惜しまずやってみる。新しいことにどんどん挑戦してその結果を自分のものにしていく。こんなことが『尾瀬のゆきどけ』の味に表れているんだろうな……と思いました。
昨シーズンまでヤブタ(楽器のアコーデオンのお化けみたいなもの)と袋しぼりだけだったお酒の搾りも、今年から『佐瀬式』という槽しぼりを復活させるそうです。
堀越杜氏をはじめ、忙しい中、蔵の皆様、本当にありがとうございました。
京子
 |