(2006年11月)龍神酒造【後編】

さて、蔵の中をすべて見学させていただいた後、堀越さんに「社長が座敷で待っておりますので……」と座敷のほうへ案内されました。
実は、こういう席が結構苦手です。でも、お断りするのも失礼だし……。

「失礼します……」

毛塚社長に以前ご挨拶だけはしたことがあったけれど、ちゃんとお話しするのは初めてです。
「今日は勉強しにいらっしゃったと聞きましたので……」と社長自らいろいろな話をしてくださいました。少し「ほっ」。
印象に残ったお話。
水に恵まれているという話。
酒米に関して……群馬県で山田錦が手に入ったのは20年前。それもほんの少量だったとのこと。その当時は良い酒米を手に入れるのに本当に苦労したこと。
だから、今は良い酒米を手に入れることに、ありとあらゆる努力をされていらっしゃるようにお見受けしました。
良い酒米と良いお水、ある意味、お酒を造る上での土台を社長がしっかり造ってドンとかまえていらっしゃるので、蔵の若い造り手の方たちはいろんなことに挑戦できる余裕があるのかもしれない……。そんなふうにも感じました。

龍神酒造さんではビールも造っていらっしゃいます。
『オゼノユキドケ』です。ホワイトヴァイツェン、ブラウンヴァイツェンなど。
これからはプレミアムシリーズという形で販売するそうですが、私はレッドエールがバランスが良くてふくらみがきれいで好きでした。

ビール醸造に関しても面白い話を教えていただきました。
イギリスはビールとそれを飲ませるパブの国です。
私も学生時代、ロンドンに駐在していた姉の家に2ヶ月くらい押しかけたことがあります。
そのときやっぱり、郊外のアパートなのに近所にパブが3件もありました。日本の居酒屋さんみたいな感覚かな……? お昼のご飯もそこで食べられます。
そのイギリスで産業革命ならぬ、「キャンペーン・フォー・リアルエール」という古典的エールビールを守ろうという運動が起きた、という話を教えていただきました。
ビール好きの方はご存知かもしれませんね。
かいつまんで話せば、熱処理をしない樽熟成のエールビールは本来、樽のまま各パブの地下で樽熟成され、その地方の味わい、そのパブ独自の熟成の味わいを持っていたのに、大手のビール会社が、その非効率的な樽熟成ビールをやめて画一的な味わいのビールのみ生産して販売しようとしたので、リアルエールをこよなく愛する愛飲者がそれに反対する運動をおこした、という感じです。

なんだか、ちょっと前の地酒ブームに似ていますか……?
でも以前の地酒ブームをあまり知らない世代の私には、ぜひこれから起きて欲しい「しっかりと造られた、良い日本酒の長期熟成」に理解を深める動きの話のようで、思わず興奮して聞き入ってしまいました。
こんな運動、私の周りでもひっそりと少しずつ起きているような気がします。

社長のお話はお酒の歴史から造りの話、酒米の話、お酒にかかる税金の話まで多岐にわたり、とても興味深かったです。
もっと私にいろんな知識があれば、もっと深いお話ができたのに、まだまだ……。

『オゼノユキドケ』のホワイトヴァイツェンです。
「フレッシュな状態で飲んでいただきたい」とビール醸造担当の彼は(ごめんなさい、お名前忘れてしまいました)説明してくださいましたが、私はちょっと長めに冷蔵庫に入れておいて酵母がなじんだ感じの頃に飲むのが好きです(もちろんフレッシュなときも抜群に美味しいです)。この彼もなかなかの職人さんでした(笑)。

ぜひ、もう少しご迷惑をかけない時期に、もう一度お客様と一緒に伺ってみたいお蔵です。

龍神酒造の皆様、あらためて、ありがとうございました。

京子

ページの先頭へ
このサイトについてご意見・ご要望